2017年2月1日水曜日

第53回テーマ展示「EBM」

先月1月7日(土),蔵本分館で「エビデンスに基づく医療を実践するEBMワークショップ」が開催されました。
このワークショップは,講師に倉敷中央病院 救命救急センター長の福岡敏雄先生をお招きして,2014年度から継続して開催されているもので,毎回学内外から様々な分野の医療関係者の方が集まり,実り多い勉強会となっています。
このワークショップ開催を受けて,今回のテーマ展示,テーマは「EBM」です。展示の監修は,講師の福岡先生にお願いしました。

「EBM」は,「Evidence Based Medicine」の略で,日本語では「根拠に基づく医療」と訳されることが多いようです。
この「EBM」という言葉が初めて論文上に登場するのは1991年のことですが,その概念は私達が考えるよりもずっと古いもので,哲学的起源は19世紀のパリにまで遡ることができると言われています。
また「EBM」の学問的基盤である「臨床疫学」は1960年代にすでに,データの定量解析,適切な臨床判断につなげることを目的とした点など,現代の「EBM」に通じる考え方を持った研究分野として確立されていました。
1970年代にそれらの概念を整理し,普及に努めてきたのが,カナダMcMaster大学(当時)のSackett博士らのグループです。
1997年に『Evidence-based medicine : How to Practice & Teach EBM』(David L.Sackett[ほか]著)が出版され,「EBM」という言葉は世界中で用いられるようになりました。

「EBM」が,これほど急速な広がりを見せた背景には,統計解析手法の進歩により,根拠となる臨床研究のデザインや方法論,妥当性・信頼性を判断するための基準が整備されてきたこと,情報処理技術の向上やインターネット環境の充実に伴い,膨大な文献の中から質の高い臨床研究の結果を効率よく入手できるようになったことなどが挙げられます。

一方で,あまりに速い拡散には弊害もあり,「EBM」にはその主意が正しく理解されにくかったという側面もあります。

EBMに限らず何かを実践するためにはまず,その本質を知ることが大切です。今回の展示では初心者向けの気軽に読める本,さらに掘り下げたい方にはより詳しい解説書,上記で紹介したSackett先生の著書などを取りそろえ展示しています。

「EBM」って難しそう,とか,実際どういうものなのか,まだうまくイメージできないという方も,この機にまず「EBM」に親しむところから始めてみませんか。
第53回テーマ展示「EBM」を,どうぞご活用ください。
みなさんのご利用,お待ちしています!

(ちなみに,2014,2015年度EBMワークショップの福岡先生の講義部分を図書館HP上で動画公開しています。閲覧は学内からのみ可能です。興味のある方はこちらもぜひチェックしてくださいね!→動画はこちら



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